ノーコードで本当に業務アプリは「数時間」で作れるのか?〜AppSheetやkintoneの現実的な開発スピード〜

はじめに
最近よく耳にする「ノーコード開発」。
AppSheet や kintone などを使えば、プログラミング不要で業務アプリが作れると聞き、「数時間でシステム完成」なんて言葉に惹かれる方も多いのではないでしょうか。
しかし、現場で本当に使えるレベルのアプリは、果たしてそんなにすぐ作れるものなのでしょうか?
この記事では、実際にAppSheetやkintoneで複数の業務アプリを開発してきた経験から、「本当のところ」を解説します。
なお、この記事の内容は、個人の印象も強いので絶対的なものではないことを念頭に置いてお読みください。
ノーコードでも「数時間で完成」は一部だけ
よくある「数時間で完成できる」というのは、以下のような簡易的なアプリです。
- アンケートフォーム
- 問い合わせ受付フォーム
- 単純な一覧+登録画面(ToDoリストなど)
こういったアプリは、テンプレートやチュートリアルも多く、AppSheetやkintoneなら実際に2〜3時間で作れてしまうこともあります。
現場で本当に使えるアプリは、こうはいかない
一方で、業務にしっかり組み込むレベルのアプリとなると話は別です。
例えば「シフト希望管理アプリ」を考えてみましょう。現場では以下のような要件が出てきます:
- ログインユーザーごとのアクセス制御
- スタッフごとの希望・確定情報の自動割当
- 職種や人数によるバリデーションチェック
- 管理者向けのマスタ編集機能
- 集計用の仮想列・ロジック処理
これらをすべて実装しようとすると、たとえノーコードでも丸1日以上の作業時間が必要になるケースがほとんどです。
ノーコードの「速さ」は本質じゃない
AppSheetやkintoneの最大のメリットは、「速さ」よりも業務に柔軟にフィットさせられる拡張性にあります。
- Excel感覚で使えるデータ構造
- 権限設定やビュー切り替えも柔軟
- スマホ・PC両対応で即運用開始可能
つまり、「完成までの速さ」よりも、運用しながら調整・進化させていける柔軟性こそが最大の武器なのです。
実際に開発する際のスピード感の目安
開発規模 | 内容 | 想定時間 |
---|---|---|
小規模(フォーム+一覧) | 問い合わせ受付/簡単な報告書 | 1〜3時間 |
中規模(ロジックあり) | 勤怠・シフト希望など | 6〜10時間 |
大規模(権限制御・複数テーブル) | 在庫管理/施設利用予約など | 2〜5日(段階開発) |
まとめ:数時間で終わらなくても焦らなくていい
ノーコードツールはたしかに「最速」ではありますが、それはあくまで慣れてからの話。
最初の1〜2本は思ったより時間がかかるかもしれませんが、それも業務に本当に合うアプリを作るためのプロセスです。
「まずは必要最小限から作って、運用しながら改善していく」
そんなやり方こそ、ノーコードと最も相性の良い開発スタイルなのです。
実際に触ってみると、本当に「みんなでスプレッドシートに入力するだけ」のようなアプリであれば、すぐにできますが、利用者の権限を考慮するとか何らかの制限をかけるようなものだと日数単位で時間がかかることもあります。
ですので、まずはある程度作ってみて、使いながら育てていくというのが正解かもしれません。